アンソニー・プログさんのレッスンを受けてきた。
2017/12/27
トランペット奏者として、また作曲家、教育者としても国際的に有名な
アンソニー・プログさんが来日され、各地でティーチング・ツアーを
行っておられたので、私もチューバでレッスンを受講させていただきました。
なお、上のCDは今よりほんのちょっとだけ(!?)、お若い頃の写真(笑)
以下のiTunes版では試聴も出来ます♪
20th Century Settings For Trumpet – Anthony Plog, Sharon Davis, Robert Karon, G. Burnette Dillon, Jack Sanders & Hal Smith
なお、今回私は基礎的な部分と、プログさんご自身が作曲された曲の演奏を
見て頂きたかったので、プログさんの先生でもある、ジェームズ・スタンプさんが
考えたウォーム・アップのフレーズが引用として登場するロジャー・ボボさんの
「マスタリング・ザ・チューバ」とプログさんがチューバとピアノのために
1980年に作曲された「3つのミニチュア」を持っていきました。
美しく歌いながら演奏したり、音楽的に演奏することは、
効率的、快適、自然で無理のない吹き方につながる
トランペットの方にチューバで基礎的なことを受講するのは…と初めは迷いましたが
結論からいくと、本当にプログさんのレッスンは素晴らしく、久々に、
両手に持てきれないほど、沢山の色々なヒントを頂くことが出来ました…!!
また、私が受けたレッスン内容の掲載について快く許諾をいただきましたので、
こちらに備忘録的に、書き残しておきたいと思います。
読んでいただくと、気付いていただけるかと思うのですが
プログさんのレッスンは、楽器を問いません…!!
もし、またプログさんが来日される機会があれば、是非、楽器を問わず
沢山の方にレッスンを受けてみて頂きたいと私は思います。…運が良ければ、
プログさんの吹く素晴らしいオケスタを真横で聴くことも出来ますしね(笑)
美しく歌うように、水の流れのようにとても良い流れを持って…
(時系列順にレッスンの内容を書き起こす前に…)
スタンプさんのフレーズを見ていただいた際、プログさんが常に仰っておられたのは、
この言葉でした。また(私の場合は特にだと思いますが)、
「大体の音程では無く、”まさに正しい”音程で」
という指摘も、それぞれの箇所で頂きました。
そして、プログさんは、随所で「これは私のアイデアだよ」
また、途中にも出てくるのですが、
「必ずしも1つだけのやり方があるとは、私は言いたくない。
人々は”こうやらなければならない”と思いがち」
と仰られ、併せて、私がチューバで吹いている点も考慮しての
アドバイスも中にはあったかと思い
■マウスピースだけで”ドレミファソーファソファ…”の部分
「こんなに低い音のスタンプを聞いたのは初めてだ(笑)」
⇒ちょっと緊張している私を、こういう言葉でほぐして下さいました♪
「キーが変わらないように」
◎”ドレミファソーファソファソファミレドー、レミファソラーソラソラソファミレー”
×”ドレミファソーファソファソファミレドー、レミファ#ソラーソラソラソファ#ミレー”
「イントネーションに注意深く」
⇒「ゆっくりのテンポでイントネーションを確認」
「本当に正確なピッチで。大体のピッチではなく”まさに正しいピッチ”で」
⇒私の場合、音が下降していくとき特に。
「ほぐれる事、そしてピッチの正確さが大切」
■(楽器で)”ドレードソラーソドー”の部分
「常に歌うように。そして、イントネーションに注意して」
⇒「チューナーのハリを見ながら練習するのも、この場合は(私の場合は)良いかも」
Q.チューバでこのフレーズを演奏するときは(4番5番ヴァルブを使わずに)ペダルの指使いで拭いたほうが良いですか?
⇒A.「くり返していくうちに音質が豊かになる、よりリラックスできたり、ウォーム・アップが出来た感じが得られる方、快適な方を選んで下さい」
ちなみに、トランペットの場合は、以下の3通りの可能性があるそうで、
①オクターブ上と同じ(ペダル)の指使い
②1番2番3番、全てのヴァルブを押す
③半音下の指使い
プログさんは、生徒さんに一番快適な物を選んでもらっているそうです。
「厳密なルールというより、自分にとってプラスになる方法を選ぶ」
■”ドレミファソーファソファソファミレ…(続く)”の部分
「スタンプの考えに、”下降形の時に、上に留まりなさい”というものがあります」
⇒私が吹いた際、音が降りていく時にいつも下がり過ぎてしまうため頂いたアドバイス
併せて、次のように少し音型を変えて、私が出来るまで一緒に練習して下さいました。
⇒ドレミファソー
⇒ドレミファソーファソファソファソー
⇒ドレミファソーファソファソファミファソファミファソー
⇒ドレミファソーファソファソファミレミファソファミレミファソー
⇒元の音型
その後、フェルマータの部分を全て無しにした形でも、一緒に練習して下さいました。
・プログさんが、初めてスタンプさんの所に行った時には
ウォーム・アップ(他の箇所も含む)が完了するのに45分かかった。
そして、(習い始めてから)時間が経ち、ある程度してからは25分で完了できるようになった。
「水の流れのように、とても良い流れを持って」
「出来る限り楽に、快適に」
(また、必ずしもゆっくりやる必要はなく、快適に出来るテンポで演奏する)
モルダウの曲のはじめの様に(笑)
どんなウォーム・アップであれ、音楽の一部として考えて下さい。
音楽的に、そして流れがあるように。
-私にとって、このモルダウ(冒頭のフルートの部分)の例えは、
とてもイメージしやすい物でした。
「必ずしも1つだけのやり方があるとは私は言いたくない。
人々は”こうやらなければならない”と思いがち」
⇒私は、特に、”こうやらなければならない”と思う人の一人でしたので、
この後に出てくる”難しいと感じる部分の練習の仕方”を含め、とても有難いお言葉でした。
「テクニカルに難しいところが出てきたら、
テクニカルな解決策より音楽的な解決策から探してみることが大切」
⇒ここで題材が、3つのミニチュアに移ります。
私は1楽章の跳躍が中でも難しく感じるので、その部分から。
■3つのミニチュア 1楽章の部分より
「難しいパッセージがあれば、まず、単純化して練習する作戦があります」
例えば、冒頭の”ドソシbミbラbレb”の部分を、
”ドドドミbミbミb”や、”ドソシbミbミbミb”などに変えて
均等に吹ける様に練習する。
また、以下の理由からここで「経験してもらうために」と、
下(の音)に意識を持ち続ける方法
上(の音)に意識を持ち続ける方法
この2つの方法で、同じフレーズを吹いてみることに…。
鍵がかかっているドア
鍵の位置を探っています
鍵の位置が見つかっていないと上手くいかない
私の場合は、ちょうど上の音に意識を持ち続けて吹いたときに
とてもスムーズにフレーズを吹くことが出来ました。
それを聴いてプログさんは、
難しい譜面の楽譜を何度も練習するよりは
上手くいく正しい戦略をまず見つける。
ある人にとっては下に留まる。
ある人にとっては上に留まる。いくつかやってみて、
上手くいかないものは捨てていき
上手くいくものを見つける。いくつか自分にとってキーとなる音がある。
それを見つけることが大切。
■3つのミニチュア 2楽章の部分より
ここで一度私は、2楽章を通して演奏し、
中間部の”ファ-ド、レ-ラ、シb-ファ、ソ-レ”の跳躍が上手くいきませんでした。
また、以前よりここが苦手な旨をプログさんに伝えました。
単純化して練習することで、
空気のことにも良く働くし
音楽的なラインを掴む手助けにもなります
すると、このように仰られ、ひとつのエピソード、マーラーの交響曲第5番の冒頭の
有名なトランペットのソロの練習方法について、お話をして下さいました。
「マイケル・サックスさん(クリーブランド響)が練習する時は、
このように(楽譜を単純化して)何回も何回も、自分が納得するまで練習します」
そのままプログさんは(楽譜通りではなく)、”ド#ド#ー、ド#ド#ー、ド#ミー”と、
実際に吹いてみせてくださいました。
音楽的に考えることで
技術的な問題を解決できる。
この後私も、先ほどの苦手に感じている場所の、拍の頭の音のみを取り出し
出来るだけ美しく歌えるように練習を続けました。
⇒私としては”丁度アンブシェアの変わり目…”という苦手意識があったのですが、
なぜか口のことを考えずにスムーズに吹けるようになりました。
■3つのミニチュア 3楽章の部分より
ここでは、早いパッセージに使うダブル・タンギングの事が主な内容となります。
プログさんは3楽章の冒頭の16部音符が続くフレーズを聴いて下さった後、
「タンギングしすぎている感じがする」と仰られ、面白い例えを話をして下さいました。
ホットドッグがあります。
これ1つが全音符です。半分に切ると二分音符です。
もう半分に切ると四分音符です。
(こうやって半分にしていくと)十六分音符です。その切った物を1つ取り出して、
どこから見ても、それはホットドッグです。いくら音が短くなっても
質が同じになるように。
ということで、練習法としては、ダブルタンギングでゆっくりと
一つ一つの音を長くテヌートで吹ける様に練習を行いました。
その後、練習に適した題材として、アーバンのダブルタンギングの項の
一番初めの練習曲に話題が移ります。
これをまず、先ほどと同じように「ゆっくりと長く」、そして
「”K”を強くしたりするのではなく均一」に吹けるよう練習します。
その後、”K”だけのシラブル(この時は”Ka,Ka,Ka,Ka,Ka”)でも
単発で発音できるように、別途練習を行いました。
「出来るだけ自然に」
「イージーに。」
(と仰って、プログさんは椅子に寄りかかりながら吹いてみせる素振りを 笑)
そして、ここでも一つの例として、シェヘラザードに登場するトランペット・パートの
非常に早い部分のオケスタを吹いてくださいました。
(これが、また、当たり前なんですが素晴らしい!!)
早く短いところほど、長く吹こうとする気持ちで。
テンポは速くするけど、音の長さは長く。
■最後に「3つのミニチュア」を演奏する際のイメージを伺いました…。
1楽章や3楽章の途中に出てくるメロディックなフレーズは
アグレッシブに演奏した方が良いのか、もしくはシンプルに演奏した方が良いのか等々、
プログさんに作曲された時のイメージをお伺いしたところ…
作曲者として曲を書いて、世に送り出したら
演奏者に委ねています。曲は、作曲しているその時にイメージした物があっても
ある奏者が演奏して、それはそれで良いと思うことがあります。
■最後に…
長文で乱筆な内容にも関わらず、最後までお読みいただき誠に有難うございます。
そして、素晴らしいレッスンを行ってくださったプログさんだけでなく
本当にテンポ良く、適切な言葉で分かりやすく通訳して下さったトランペット奏者で
プログさんのお弟子さんでもある、高垣智さんに感謝…!!
そして、本題に移る前にも書かせて頂きましたが、レッスンの内容を読んで頂いたとおり、
プログさんのレッスンに楽器の制約はありません…!!
そして、プログさんの曲を必ず持っていく必要もありません!!
(もちろん曲については、お伺いすれば細かいことを教えて下さいます♪)
個人的な意見となりますが、トランペットを演奏される方でしたら
オケスタのレッスンなんかも最高だと思います!
以上、もし、またプログさんが来日されることがあれば、もう一度レッスンを受けたい…。
そして、運がよければ、今回と同じく真横でプログさんが吹くオケスタを聴きたいと
思っているような不届き者による乱筆ならびに長文の備忘録でした。
重ね重ねではございますが、最後までお読みいただき誠に有難うございました!
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Comment
こんにちは
がんもどきさんのブログ、とても参考になります!ありがとうございます!
私は中学の時はピッコロで、高校になってから人数の関係でチューバになりました。まだ初めて1ヶ月程度です そこで、教えてほしいことがあります。どういう音がチューバが目指すべき、チューバとしてのよい音なんでしょうか?がんもどきさんはどういう事を気をつけて吹いていますか?YouTubeなどでプロの方などのチューバの演奏を探してみましたがよくわかりませんでした…。
それと、がんもどきさんのチューバの好きなところを教えてほしいです!
詩織さん
こんにちは!こちらこそコメントを頂き誠にありがとうございます。
ピッコロからチューバへ…最高音楽器から最低音楽器への移動、木管楽器から金管楽器へ移ったことも含め、非常に大変なのでは無いでしょうか…心中お察しいたします(*_*;
さて、頂いたご質問についてですが、1つずつお答えさせて頂きますね♪
・・・と、その前に丁度、このレッスン記事のプログさんの言葉にもあるのですが、
誰しも「”こうやらなければならない”」と思ってしまいがちです。(私も含め)
音色についても、気をつけることにしても、みんなそれぞれのイメージや考えがあり、それぞれが理想だと思います(^_^) 以下はあくまで私の個人的なイメージや考えになるので、その点、ご了承下さい♪
Q1.どういう音がチューバが目指すべき、チューバとしてのよい音なんでしょうか?
(中略)YouTubeなどでプロの方などのチューバの演奏を探してみましたがよくわかりませんでした…。
A1. 音色のイメージや好みは人によって千差万別なのですが、この質問を頂いてひとつ思いついたことがあります。
それは、YouTubeやCDで聴く(見る)チューバ・ソロの多くがF管で演奏されていることです。
チューバには大きく分けて、コントラバス・チューバ(BBb管、CC管)とバス・チューバ(F管、Eb管)の2種類があり、両方ともチューバに代わりはないのですが、音色や響きが若干違い曲や編成によって使い分けることが多いです。
F管は、管が短くなる分、音をコンパクトにまとめやすく、細かいパッセージも吹きやすいためソロ等でよく使われます。音色も若干明るくなります。
(BBb管やCC管は、楽器が大きい分、深い響きが得られるため、大きな編成、吹奏楽やオーケストラでよく使われます)
ここで詩織さんの求めている音色(今使っているのは恐らくBBb管)との差異があるかもしれません。
私も初めて買ったチューバソロのCDはF管で演奏されていて、当時チューバに色んな楽器があることを知らなかった私は「とても上手いけど、ユーフォニアムみたいに音が明るいな!」と思った覚えがあります。
ですので、BBb管やCC管で演奏している動画やCDを探すと、イメージにより近いかもしれません♪
で、検索しても中々見つからないかもしれないので、何をお勧めしようかと迷ったのですが、次のものは如何でしょうか?
カナディアン・ブラス(YouTubeチャンネル)
※金管五重奏なのでチューバも聞き取りやすく、伴奏の吹き方の参考にもなると思います。
https://www.youtube.com/user/canadianbrass
Alessandro Fossiさんによるオーケストラ曲で有名な箇所のチューバパートの演奏
https://youtu.be/LqOZWVbOSjE
こちらはF管ソロになるのですが、女性のチューバ奏者として有名な
Carol Jantschさんによる演奏(10分過ぎから)
https://youtu.be/obNhvhaoGc4?t=10m8s
これ以外にも沢山あると思います!好みの物を見つけてみて下さい!
Q2. どういう事を気をつけて吹いていますか?
A2. 私が特に気をつけているのは「深いブレス」を取る事と、たっぷりの息で演奏することです。
「深いブレス」は口を、”ほー”の口にすると息を吸いやすいです。分かりにくいときは実際に、”ほー”と言ってみましょう(笑)
もうひとつの「たっぷりの息で演奏」は、無声音で”とー(Toh-)”と発音することを心がけています。
・・・こちらについては、いつか、ちゃんと記事にしてブログで説明しようと思います♪
以上、上手く答えになっていなかったら、ごめんなさい。
陰ながらですが、応援いたしております(*´∀`*)ノ